下肢静脈瘤だけではない、女性に多い足のむくみについて
高齢化社会を反映して「足のむくみ」を訴えて受診される方が増えています。ただしその原因は多種多様で治療法もまたそれぞれ違います。近年下肢静脈瘤の手術療法が日帰り手術で可能なほど低侵襲かつ保険適応となったことで多くの医療機関で取り組まれていますが、むくみの原因は下肢静脈瘤以外にも数多く存在します。
足のむくみとは何か
むくみ(浮腫)とは、皮膚の下にある皮下組織の部分に余分な水分がたまっている状態のことをいいます。浮腫の症状としては、手足や顔が腫れぼったくなるのが一般的です。重力の関係で水分は下へ落ちるので、通常の場合は下肢、特に膝から下の下腿(かたい)と呼ばれる部分から足先に見られることが多いです。寝たきりの方の場合は常に背中側が下になっていますので、背中や仙骨部に浮腫が見られます。
下腿に浮腫がある場合、すねの辺りを指で押して、指のあとが残るか残らないかによって、残る場合を圧痕性(あっこんせい)浮腫、残らない場合を非圧痕性(ひあっこんせい)浮腫と区別します。ほとんどの浮腫は圧痕性浮腫です。
なぜ女性に足のむくみが多いのか
これについてはむくみの原因が多岐に及ぶことにも関係しますが、
・下腿(ふくらはぎ)の筋肉量が少ない:特に高齢者で著明ですが、第二の心臓と言われる「ふくらはぎ」の筋力が低下すると静脈の血行循環が低下してむくみが発生します。
・妊娠・出産を経験する:骨盤内の臓器である子宮が増大することで下肢静脈が圧排され、これによりむくみが発生します。
・低用量ピルの使用:稀ではありますが重篤な副作用である深部静脈血栓症により血行障害をきたすことがあります。
・ファッションの影響:スカートなどの足が冷える服装や外反母趾を誘発するような履物が血行障害をもたらす。
などがあげられます。
多岐におよぶ足のむくみの原因
浮腫の原因は数多くありますが、大きく分けて、浮腫が下肢の両側なのか片側かどうか、また病気によるものとそれ以外に分かれます。また、特に高齢者の場合には、原因が一つではなく複数の要因が合わさって起こる場合がとても多いです。
- 両側性の下肢の浮腫:全身性の疾患によるもの
- 心不全などの心疾患
- 慢性腎不全などの腎疾患
- 肝硬変などの肝疾患
- 甲状腺機能低下症
- 薬剤の副作用(降圧剤や糖尿病薬など)
- 高度の肥満
- 加齢に伴う下肢筋力の低下
- 両側性の下肢の浮腫:病気以外のもの(一時的なものが多い)
- 連続した立ち仕事などの姿勢性のもの
- 塩分・水分の摂り過ぎ
- 過剰な飲酒
- 片側性の下肢の浮腫(両側性に発生する場合もあります)
- 下肢静脈瘤:主に表在性の静脈の異常
- 深部静脈血栓症、慢性静脈不全:主に深在性の静脈の異常
- リンパ性浮腫:手術に伴うリンパ節郭清によるもの
- 蜂窩織炎(細菌感染)などの感染症
下肢のむくみの治療
上記に示したようにまずは原因をしっかりと調べることが大切です。全身性の病気が原因の場合には、その治療を優先して行います。薬剤性浮腫の場合は、可能なら原因と思われる薬剤を中止します。静脈不全がある場合には、下肢を圧迫して静脈の逆流を防ぐ弾性ストッキングの着用や下肢静脈瘤の手術を行う場合があります。 それと並行して、身体の余分な水分を尿として体外に排出する利尿薬の投与などを必要に応じて行います。
ただし原因の異なるむくみに関しては治療によっては逆に悪化することもあり、初期段階で病歴や身体所見、検査所見を精査して複数あるかもしれない原因をよく吟味することがとても重要です。